オンラインファッション通販サイトZOZOTOWN(ゾゾタウン)の創業者で、最近では100億円の費用を払って宇宙旅行をしたことで有名な前澤友作氏ですが、そんな前澤氏の資産はどれくらいなのでしょうか?
この記事では前澤友作氏の生い立ちから経歴、ZOZOTOWNを設立してから成功するまでの道のりを見ていきます。
前澤友作氏の資産とは?|資産の内訳
出典:Forbes Japan
前澤氏の資産額ですが、2023年版のフォーブスジャパンの長者番付によると2390億円で日本の中で28位の資産額となっています。前澤氏はフォーブスジャパンの長者番付が公表されている2018年から5年連続のランクインとなっています。
前澤氏の資産の内訳ですが、正確な内訳が公表されているわけではないのでわかりませんが、2023年現在ではその多くがZOZO株売却による利益であると思われます。というのも、前澤氏は2019年に創業したZOZO社株を孫正義氏率いるYahoo!ジャパンに売却しているからです。この売却により、税引き前で2400億円ほどの利益を手にしたと言われており、まさにEC事業の立ち上げから売却まで理想的なエグジットと言えるでしょう。
ただ、前澤氏は過去に自身のTwitter(現・X)上で借金額は約600億円で、株を担保に入れたローンを組んでいることを投稿で明かし、「どうしても欲しかった現代アートや宇宙渡航のチケットにお金を使いました」と説明しています。一部報道で、前澤氏の借金は“2000億円”にものぼると騒がれましたが、これについては否定しています。
前澤氏の他の資産の内訳としては、数々の高額なアート作品のコレクションや高級車、住宅などがあると考えられています。また、前澤氏はZOZOをYahoo!ジャパンに売却しているものの、現在でもまだ9%弱の株式を保有しているため、これも大きな割合の資産額に含まれているでしょう。
前澤友作氏の年収
前澤氏はZOZO社株を売却後、ZOZOの社長を退任していますのでZOZO社から役員報酬などの収入はないと思われます。ただ、上記の通りまだ株式を保有していることから、多額の年間配当金を得ていると考えてもおかしくはありません。
ZOZO退社後は新しいスタートアップ会社を立ち上げており、『スタートトゥデイ』という社名で新しく起業しています。『スタートトゥデイ』は前澤氏が好きだったニューヨークのハードコア・パンクバンド「ゴリラ・ビスケッツ」の曲名だそうで、ZOZOに社名を変更する以前はスタートトゥデイという社名(以下・旧スタートトゥデイ)でECモールのZOZOTOWNを運営していました。つまり、ZOZOを辞めてからは自分が元々経営していた会社名を使って新しい会社を作ったわけですが、本稿では混乱を避けるためZOZO以前の社名は旧スタートトゥデイと表記します。
ZOZOの社長時代には年収100億円以上だったともされており、一部報道では140億円だったともされています。過去のTwitterでは自身の納税額が5年間で500億円近くだったことも公開していて、2019年度はZOZO社株売却益が大きな利益となったことから300億円近くも納税していることがわかります。
ただ、新会社のスタートトゥデイは株式会社であるものの、上場しているわけではないようですのでここからの配当金はないと考えられます。アートや高級車を売却することで利益を得ることもできますが、特にそのような情報は前澤氏のソーシャルメディア上でアナウンスがされていません。公式のYouTubeチャンネルがあり、動画は100万人以上の登録者がいることからYouTuberとしても一定の収益があると思われますが、それでも年収のほとんどは現在も保有しているZOZO社株の配当金であると考えられます。
前澤友作氏の生い立ち、経歴
生年月日 | 1975年11月22日 |
出身 | 千葉県鎌ヶ谷市 |
最終学歴 | 早稲田実業高校 |
前澤友作氏の生い立ちですが、1975年11月22日に千葉県鎌ヶ谷市で生まれました。幼少期は千葉県で過ごしたそうですが、頭がよかったことから高校からは東京の早稲田実業高校に進学します。早稲田大学の附属高校なので普通に勉強していればエスカレーター式で進学できるはずでしたが、勉強よりもバンド活動に明け暮れ、高校卒業後は進学せずに渡米しました。成功している起業家や実業家は有名大学を卒業していたり、MBAを取得していることが多いことを考えると前澤氏の経歴はまさに異端児です。
1998年には自身のバンド“Switch Style”がメジャーデビューし、前澤友作氏は『YOU X SUCK』(ユー・X・サック)のステージ名でドラムスを担当していました。ちなみに本名の友作をもじった『YOU X SUCK』は英語のスラングで“You suck”(ヘタクソ)という意味ですので、このユーモアセンスも前澤氏らしいところでしょう。
音楽CD・レコードのカタログ販売を開始
前澤氏は高校時代から趣味で洋楽レコードやCDの輸入をしていたそうで、ジャンルはパンクやハードコアなどがメインだったそうです。自分が好きな音楽を他人にも共有したい思いから自分がセレクトした海外のレコードやCDを販売すると飛ぶように売れたとしています。その後、実家の部屋で電話注文を受け付け、注文数も順調に拡大。
起業家になるつもりはなかったため、起業の準備など不慣れな中で会社を設立しこれが旧スタートトゥデイの始まりとなりました。趣味で始めたレコート・CDのカタログ販売ですが、これが起業のアイデアとなり、2000年になるとインターネットの黎明期と重なり、ネット販売に移行しまいた。これがZOZO成功の始まりとなります。
前澤友作氏はZOZOでどのように成功したのか?
アパレルのECサイトを開始
音楽CD・レコードの販売から前澤友作氏が率いる旧スタートトゥデイはアパレルブランドのネット販売に手を伸ばします。当時、ファッション服は消費者が実際に試着をしないと購入するわけないという考えから『衣料品のネット販売は成功しない』と言われ、誰も手をつけていなかった分野でしたが、あえて前澤氏はファッション服を専門にしたECサイトに着手します。
これについても、前澤氏はメディアのインタビューのなかで『洋服も好きだったので、好きなブランドを多くの人に届けたかった』と話しています。今でこそ洋服をインターネットで購入することが普通となっていますが、当時はファッションのネット販売で起業の成功例がない時代です。リスクがある中でも前澤氏は『自分だったら好きなブランドならネットでも買う』という自信から、地道にストリート系アパレルブランドに声をかけ、インターネット上にセレクトショップをオープンしました。これがZOZOTOWNの原型となり、その後はバンド活動を休止して経営に専念することにします。
ZOZOTOWNの成長
2010年代はアパレル業界全体で不況でしたが、そのなかでも旧スタートトゥデイは売り上げ4割増、利益が約8割増と好調を維持しました。2016年4〜12月期決算は、売上高が前年比で42%も増加する536億円に、純利益は78%増加の141億円と目を見張る増収増益となったのは記憶に新しいです。これにより株価もうなぎのぼりとなり、当時の株式の騰落ランキングでも旧スタートトゥデイ株が頻繁にランクインしていました。
アパレル業界は全体として縮小方向ですが、eコマース業界は拡張方向にあります。アパレル通販は今でこそ数多く存在しますが、その中でもZOZOTOWNがひとり勝ちができたお大きな理由はブランドマネジメントにあるとされています。
ZOZOTOWNは前澤氏の方針から人気ブランドを多く取り揃えることに集中しました。その結果、有名ブランドがZOZOTOWNに集まることになり、消費者が欲しいと思うブランドが買えるプラットフォームとなったことでZOZOTOWNユーザーを増やすブランド戦略に成功したのです。
また、その他のZOZOTOWN成長の要因としてCRM(顧客管理)に注力したことが挙げられます。ZOZOTOWNの“ZOZO”は『想像』と『創造』の言葉に由来しています。従来のカスタマーエクスペリエンス業界では、優良顧客を特定して上位のクライアントだけを囲い込むスタイルが典型的でしたが、同社では「ZOZOTOWNに訪問する全ての顧客の心のあり様を想像して、ZOZOならではのおもてなしを創造しよう」という方針を掲げました。この結果、同社ではCRMではなく、CFM(カスタマー・フレンドシップ・マネジメント)という独自のコンセプトを掲げ、スピード感のあるサービス提供に注力するようになります。例えばメールマーケティングは従来からある手法ですが、一方的なメール配信サービスは顧客にとって便利ではなく、メール開封率やコンバージョン率も低いことから顧客のアクションに基づき、顧客それぞれの好きなブランド商品に関して『在庫が残り1点』や『値下げしました』などの情報を提供することにしました。
この結果、カスタマージャーニーが向上し顧客満足度が向上したことからZOZOTOWNの売り上げはますます上がりました。顧客ロイヤリティが強くなったことからリピート率が増えたため、CRMは同社が安定的に成長するうえで大きな要因となりました。
ZOZO社株売却の理由
ZOZOTOWNの知名度が高くなったことから、同社は『スタートトゥデイ』から『ZOZO』に社名を変更します。ZOZOはこのまま順調に成長し、ECサイトとして楽天やアマゾンジャパンに並ぶ大手企業になると思われていましたが2018年からZOZO株が大幅に下落し始めます。
株価下落には伏優の要因が挙げられますが、主に以下が原因として考えられています。
- 日経225銘柄に不採用
- 業績の鈍化
- ファッション大手『オンワード』の撤退
- ZOZOSUITの失敗
日経平均株価とは、日経新聞社が発表する株価指数のことで、東証上場銘柄のなかでも225銘柄が選ばれることから日経225とも呼ばれています。2018年頃からZOZOが日経225に入るという期待感から株価が上昇したものの、組み入れられることはありませんでした。投資家の期待が失望に変わったことで売りに転じました。
その後ZOZOTOWNの業績が鈍化し始めると、前澤氏の社長としての目標設定やビジョンが同社の実績と一致しないことが疑問視され始め、ZOZO社の成長が継続的に可能か投資家の間で不安が漂いました。そのうえ、ファッションの大手オンワードがZOZOTOWNから撤退することも投資家の不安心理を煽る結果となりました。(現在はZOZOTOWNに再出店)
そして決定的になった失敗がZOZOSUIT(ゾゾスーツ)です。アパレル通販は試着ができないことがウィークネスでしたが、ZOZOSUITではスマホのカメラで体を写すだけでサイズの合うプライベートブランドのスーツが作れるという前澤氏の肝煎りで始まったプロジェクトでした。大きく期待されたサービスでしたが、実際には精度の低さや利用のしづらさなどの問題があり浸透しませんでした。前澤氏はZOZOSUITに関しても「将来的になくす」と早期の段階で中止を宣言してしまったことから、開発費や先行投資などを回収できずに失敗してしまったと言えます。
ZOZO退職とその後
前澤氏は自身のメディアのなかで、今後ZOZOが大企業として成長していくためには自分のワンマン経営ではなく、もっと大きな企業に率いてもらうことが必要だと感じたと述べています。そのため借金などが原因で会社を売ることになったわけではないと考えられます。
前澤氏はすぐさま孫正義氏のソフトバンクグループであるYahoo!ジャパンに買収を打診し、両者にとって良いシナジーが作れると判断され売却が成功しました。
ZOZOを退職後は自分の公式YouTubeチャンネルを作ってYouTuberとて活躍したり、日本人初の民間宇宙旅行を行なうなど楽しむなど、前澤氏は自分のしたいことをとことん追求しているようです。
前澤友作氏の資産を種別に考察
ZOZO社株の配当金
上述の通り、前澤氏はZOZO社退職後も9%近くの株式を保有しています。それまでは筆頭株主であったもののその多くを現金化したため今は議決権などがありませんが、創業者であることには変わらず、ZOZO社の業績と株価が上がれば彼の資産価値も増えることになります。
今後新しいスタートトゥデイの事業が成功し、IPOをすることになれば連続起業家として新たな成功が収めるかもしれません。
アートコレクション
前澤氏はアートが大好きなことで知られており、ハリウッドスターのレオナルド・ディカプリオ氏ともアート友達であることをメディアのインタビューで明かしています。自宅には25億円相当のピカソの絵画が現物で飾られていたりと高級アートが所狭しと飾られており、これらの資産価値も相当なものになると思われます。アートの価値は株などの有価証券とは異なり経済の相場とは関係なく安定しているため、仮に起業で失敗してしまったとしても現金化する手段があるため比較的安泰と言えるでしょう。
高級車
前澤氏は自身のYouTubeチャンネルの中でたくさんの高級車のコレクションを見せていますが、これらも同様に大きな割合の資産を占めていると考えられます。動画の中ではパガーニやブガッティ、ロールスロイスなど超高級車などを公開しているほか、新しいスーパーカーをオーダーメイドで作るなど富豪っぷりをいかんなく発揮しています。このことからも『前澤氏は借金でやばい』といった噂が見られますが、資産的には良好な健全な財務状態であることがうかがえます。
まとめ|前澤友作氏からの成功の学び
前澤友作氏はその資産規模から日本でもトップの富裕層ですが、実際の生活は地に足をついたもので派手なことはしていないようです。前澤氏はビジネスでも高いカリスマ性と卓越した経営手腕を持っていることは疑いありませんが、そのなかでも楽しさを他者と共有する意識が高いと見られます。
ZOZOTOWNが大きく成長できた理由は際立ったカスタマーサクセスが主な要因で、同社独自の“CFM”の観念でフレンドシップを共有する姿勢が顧客満足度を高め、ブランドアンバサダー的存在となる強い固定層を獲得することにつながりました。
ビジネスで成功を目指している人は、ROIやビジネスインテリジェンスなど高度なことを考える必要はありますが、まずは初心に戻って『そのビジネスで他の人たちと何を共有したいのか』を考えると前澤友作氏のように大きな資産をもたらすビジネスを築けるかもしれません。