3C分析は、自社、顧客、競合他社の3点に焦点を当てたマーケティング手法のことです。これら3つの要素が重なり合ったところに効果的なマーケティング戦略があるとする理論で、市場における競争力を確保し、ビジネスをより持続可能なものとすることができるとされています。
この記事では、3C分析の例、テンプレート、目的などを分かりやすく説明します。後半では、マクドナルド、スターバックス、任天堂に対して3C分析を実行した例も紹介していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
3C分析とは?
3C分析とは、ビジネスコンサルタントで起業家の大前研一によって提唱された手法です。1982年、大前の著書『ストラテジック・マインド(原題:The Mind of the Strategist)』の中で初めて登場しました。
この本の中で大前は、世界で最も大きな成功を収めた企業の思考プロセスについて論じています。企業が直面する問題に対する画期的な解決策を提案していることから、優れたビジネス書として世界中で大きな評価を獲得しました。
大前を評価する人物の中にハーバード・ビジネス・スクールの教授であるマイケル・ポーターがおり、ポーターは大前の著書について「日本の一流戦略家の思考の一端を垣間見る魅力的な窓であり(中略)戦略的思考を身につける方法についてのアイデアにあふれている」とコメントしています。
わかりやすく言うと、3C分析は「顧客のニーズ」「自社の強み」「競合他社が提供する製品とサービス」の3つの組み合わせから成功を導く理論です。大前は、企業はこれら3つの要素を調和させるために時間をかけるべきであり、そうすることで持続的な競争力を確保できると主張しています。
逆に、これらの要素の組み合わせがバランスを欠いている場合、企業は成功を収める能力を失う可能性があるとしています。それぞれの要素について、以下の項目で確認してみましょう。
3C分析の他には、4P分析など数多くの分析フレームワークがあるので、他の分析手法が気になる方は併せて確認してみると良いでしょう。
3C分析の顧客
3C分析において、顧客は最も重要な要素です。顧客がいなければ企業も存在せず、競争力を得ることもできません。顧客は戦略の基盤であり、企業は株主ではなく顧客の利益を最優先とすることで成功を収めることができます。
そのためには、顧客動向を詳細に把握する必要があります。マーケティングの効果を最大化するためにも、次の点に集中して顧客データを集めるようにすると良いでしょう。
【顧客分析のポイント】
- ターゲットとする顧客層は、どのような人々で構成されているか?年齢、収入、趣向などを調査する。
- 顧客が商品を購入しようと思う理由は何か?思想、経済状況、社会的ステータスが意思決定にどのように影響を及ぼすか?顧客が解決しようとしている問題は何か?
- ターゲットとする顧客層をどのようにセグメント化できるか?それぞれのセグメントに対して、どのようなマーケティング手法が効果的か?例えば、コーヒーを商材として扱っている場合、覚醒効果を期待する顧客と、社交目的で消費する顧客とでは、効果的なアプローチに違いがある。
3C分析の競合他社
3C分析では、自社が競合他社に比べてどのように優れているか、または劣っているかを把握する必要があります。「事業規模にどれだけ差があるか?シェアを奪おうとしているのは自社か、それとも他社か?」といった点が注目点となります。
競合他社を中心とした3C分析により、購買活動、エンジニアリング、サービスなどに対する効果的な投資が可能となります。テンプレートを用いるのが一般的で、3C分析の事例としては以下のようなものがあります。
【競合他社分析のポイント】
- ブランドイメージへの投資・・・ソニーやホンダなどの企業は、広告と消費者関係への大規模な投資によって競合他社よりも多くの販売数を達成できたと言われています。
- 人、金、モノ・・・ビジネスにとって、人、お金、モノは最も基本的な概念です。競争力を確保し、他社と差別化を図ることで、これらのリソースをバランスよく保つことができます。例えば、必要以上の資産を保有する企業は、余剰分の資産を無駄に浪費する傾向があります。この場合、まず企業が自身のビジネス戦略を定義し、それに見合った予算を組むという手順を踏むのが効果的です。
- 利益とコスト構造の違い・・・新製品の販売や付加価値のあるサービスの提供など、金銭的でない価値を考慮することも重要です。また、固定コスト比率が低い大企業は、市場停滞時に値下げを実施することでシェアを獲得することもできます。
3C分析の自社
3C分析では、テンプレートを用いて自社(自身が展開するビジネス)を短期・長期戦略に分けて評価します。自身のビジネスを客観的に評価するのが難しいという場合は、従業員から意見を募るのも良いでしょう。
また、具体的な数字を用いるという方法もあります。自社のデータは参照が容易ですので、積極的に活用するようにしましょう。
自社の評価項目には、以下のようなものがあります。
【自社分析のポイント】
- 専門度・・・「専門分野に狙いを絞ってサービスを展開しているか?」という点を評価します。専門分野がないという場合は、どのような製品ジャンルや市場に注力すべきかを特定します。
- 生産・調達過程・・・サプライヤーだけでなく、自社生産の商品も評価対象です。サプライチェーンを利用した物流と、外部委託全般も合わせて評価します。
- コスト効率・・・自動化や合理化できる可能性が最も高いプロセスに焦点を当て、削減可能な運営コストを算出します。また、現在の商品価格が適正であるかどうかなども評価対象となります。
3C分析のやり方
3C分析のやり方は簡単で、基本的には「顧客」「競合他社」「自社」の3つの円がどのように重なり合うかを見ていきます。円同士は相互作用しますので、この相互作用を深く理解することが改善に向けた近道となります。
- 顧客・自社の重なり合い・・・顧客と自社が重なりあう場合、顧客は自社製品を肯定的に認識していることを意味します。支払いにつながるインセンティブを継続的に提供することで、市場で競争力を発揮することができます。
- 顧客・企業・競合他社の重なり合い・・・三つの円の交差点では、価格競争が起こる可能性があります。言い換えれば、自社の製品やサービスが他社のものと同じか、同じと認識されている状態を意味します。これは価格競争につながる可能性を示唆しており、顧客に自社固有の価値を認識させることが重要となります。
- 顧客・競合他社の重なり合い・・・顧客が競合他社の製品やサービスを好むという望ましくない状況を意味します。
- 競合他社・自社の重なり合い・・・どちらの側も顧客からの支持を得られていない状況で、最悪の場合は価格カルテルに至る可能性があります。
3C分析は順番に解決するのが重要
3C分析は、順番に優先度の高いものから取り組むのが重要です。新たな問題の発生を避けるためにも、まずは顧客に焦点を当てて改善を図っていくのが良いでしょう。
3分析では、株主よりも顧客を優先して関係改善に取り組みます。と言っても、株主を完全に無視するというわけではありません。大前の理論によると、顧客に寄り添ったサービスを提供することで、株主から厚い支持を取り付けることができます。
はじめに顧客のニーズや趣向を特定し、その次は顧客が自社製品(あるいは競合他社の製品)やサービスをどのように認識しているのかを調べあげます。商品、価格、提供方法など、どういった点に問題があるのかを特定することで、強みを活かし弱みを補強するためのリソースを効率的に配分することができます。
また、市場で競争力を発揮するといっても、すべての分野で優位に立っている必要はありません。むしろ、1つの分野で決定的な優位を確立し、競合他社との差を広げていくことに注力すべきだと言えます。
起業の準備を始めている人は、事業プランが本当にマーケットに受けるものなのか等、客観的な目線で再度分析してみるのも良いでしょう。
3C分析のテンプレート
3C分析をわかりやすく説明するため、マクドナルド、スターバックス、任天堂の3企業に対してテンプレートを適用してみました。
3C分析テンプレート – マクドナルドの場合
・自社
- ハンバーガー市場において第一位のシェアを誇る
- 付加価値の高い商品(限定メニューなど)の売れ行きが好調
- 『ハッピーセット』などの提供により、子供や子持ち世帯からの支持が厚い
- 非健康的なイメージはマイナス要因と言える
- デリバリー事業に意欲を示しており、事業拡大の余地がある
・顧客
- 忙しい人や、食べ物にあまり関心のない顧客が多い
- 若者など、金銭的に余裕のない顧客も多い
- 一人で利用する人が多く、テイクアウトして家で食べる人も多い
- 高齢者は利用を控える傾向にある
・競合他社
- マクドナルドよりも高い年齢層の顧客をターゲットにしている
- 質に投資する企業が多く、味や栄養面で差別化を図っている
- 店内の雰囲気や客層を一定に保つことで、安心して利用できる空間を作り上げている
3C分析テンプレート – スターバックスの場合
・自社
- おしゃれな雰囲気があり、高級感がある
- 無料WiFiなどのサービスは先進性に溢れる
- マグなどの独自製品は、ブランド力が高い
- コーヒーの種類が多く、味も良い
- 独特のメニュー名や忙しい雰囲気を敬遠する人もいる
・顧客
- いわゆる「意識高い」系のオフィスマンや学生によく利用されている
- 価格の高さを気にしないという人が多い
- 長く滞在する人が多く、WiFi目当てでくる人も多い
- 観光客など、移動中の人に利用されることも多い
・競合他社
- 一部の企業は、庶民的で入りやすい雰囲気作りにつとめている
- 低価格路線を打ち出しているところもある
- 提供速度を高め、通勤者に人気のサービスを展開している
3C分析テンプレート – 任天堂の場合
・自社
- ゲーム機市場で一二を争うシェアを持つ
- キャラクター商標が多く、グッズ販売が好調
- テーマパークや映画など、ゲーム以外の分野にも進出している
- モバイルゲームに対して苦戦を強いられている
- ソフト開発は利益が大きい一方、開発期間が長くリスクも大きい
・顧客
- 年齢層が広く、子供から大人まで多くの人に支持されている
- 競合他社のファンの中で、まったく支持しないという人もいる
- モバイルゲームをよくプレイする人は、利用を控えがち
- 他のゲームはプレイしないが、任天堂はプレイするという人もいる
・競合他社
- 特定の年齢層に絞った商品により差別化を図っている
- 任天堂に追随する形でサービスを提供する企業もある
- 特殊な市場のため、サードパーティが競合他社となることもある
- 親会社の規模とブランド力が大きい
3C分析の例まとめ
テンプレートを用いて3C分析を行うことで、複雑なビジネスをわかりやすく捉えることができます。最近では、系削減を目的としたBPRなど企業内のビジネスフローの改善が流行っていますが、3C分析などマーケティング分野を改善し、攻めの経営をすることも重要です。
また、3つの要素が重なりあうところを特定することで、どのような点に注力したら良いのかを簡単に特定することが可能です。
今回はマクドナルド、スターバックス、任天堂を例にとって3C分析を行いました。様々な企業で採用されている手法ですので、ミーティング時などにぜひ試してみてください。また、SWOT分析などと比べてみると、その目的やフレームワークがわかりやすいでしょう。