いまの時代ECサイトを誰でも作成することはできますが、問題なのは集客です。ECサイトが存在しても必ずしもそれを必要としている顧客に届くとは限りません。

それでもオンラインで商品を売りたいと考えている小売事業や生産者の方はECモールを利用するのがとても効率のよい選択肢になるはずです。利用者の多いモール型ECに出店すれば単独のECサイトよりも集客面で有利なうえ、多くのECモールは出店が簡単にできます。

ECは日本国内だけでなく世界をマーケットにすることができ、近年では東南アジア越境のECモールも注目されています。この記事では数多くあるECモールをランキング形式で比較していきます。

ECモールとは?

ECモールとはeコマース(電子商取引)版のショッピングモールの意味ですが、簡単にいうとネット上の多数の企業や小売店、出品者が出店したり、商品を出品したりできるショッピングモール型のECプラットフォームです。

ECサイトは誰でも作ることができ、簡単に自分の商品を出品することができますが、大きな課題が集客です。ECサイトを作ったからと言って商品が簡単に売れるわけではなく、お客さんを自分のサイトに見つけてもらわなければなりません。Twitterを運用したSNSマーケティングを行ってみたり、Line集客などでお客さんを自分のサイトに集めるなど自分で集客努力を必要とします。

一方、ECモールはいわばネット上の大型ショッピングモールのため、すでに大勢の消費者が集まっているのが最大の魅力です。一つのウェブサイトにアパレルから電化製品、食品、美容品などの種類の商品が全て揃っていているため、小売店からしても認知度が高いECモールに出店・出品すれば自分の商品を多くの人に見つけてもらいやすくなるメリットがあります。さらに商品の信頼性も高くなるためネット販売が初めての人にはECモールで出店するのはおすすめとされています。

ECモールの種類を比較

ECモールと言っても種類は様々です。自分の事業に適したECモールに出店するためにも、まずはECモールのタイプを比較しながらそれぞれの特徴を見ていきましょう。

ECモールのタイプ比較1:テナント型ECモール

テナント型ECモールの構築図

テナント型のECモールはいわゆる一般的な出店型のECモールサイトです。事業者が自分の店舗を出店する形式をとったECモールで、出店者はモール内の店舗を運営するテナント(賃借人)という扱いになります。日本国内では楽天市場やYahoo!ショッピングがテナント型のECモールのカテゴリーになります。

出店者からすると自身のショップを借りてサイトのカスタマイズなどができるだけでなく、ECモールのウェブサイトを利用している人から検索されやすくなるメリットがあります。また無名の小売店や事業者でも、そのECモールに出店できるだけで信用度がつきますので消費者からの安心感も得られるのは利点でもあります。また、自分のショップをカスタマイズできるのでブランド戦略が効果的にできる点も長所です。

デメリットとしては、コストが高くなる可能性がある点です。経費としてテナント料や出店料、販売金額に応じた手数料、モール全体で実施されるキャンペーンへの参加費用などのラニングコストが発生することが挙げられます。

また大きなECモールほど運営者側に力があるため、運営者側から急な変更や要求がされた場合出店者に大きな負担が生じる可能性もあります。最近では楽天市場が送料無料化の方針を打ち出し、その負担を個々の出店者がしなければならなくなったことから一部出店者が猛反発し騒動となりました。運営者側の方針に影響を受けやすいのもデメリットとなります。

テナント型ECモールのメリット:

  • 集客が比較的楽になる
  • サイトが自由にカスタマイズできる
  • ネット販売を始めたいと考えている小売店向け
  • 高い信用度がつき、顧客の安心感を得られる

テナント型ECモールのデメリット:

  • テナント料以外の費用が発生する可能性
  • 出店までに時間がかかる
  • 運営者の方針に条件が不利でも従わざるを得ない可能性

ECモールのタイプ比較2:マーケットプレイス型ECモール

マーケットプレイス型ECモールの構築図

マーケットプレイス型ECモールの出品のみを行うECモールです。『マーケットプレイス』とは売り手と買い手を結びつける取引場のことのため、品物の売買に焦点が置かれています。

マーケットプレイス型のメリットとしては一つのサイトに対してさまざまな個人や企業が特定の商品を出品することができるため柔軟なセールスが可能になる点です。基本的なコストは取引ごとの手数料などになるため、在庫が少ない場合はテナント型よりも費用対効果が高くなる可能性があります。

また、自分の販売サイトも作り込む必要がなく、売りたい商品の画像が手元にあればそれを使って即座に出品できる手軽さも強みです。そのため起業のアイデアはあるけども、とりあえず小規模でスタートしたいと考えている方はマーケットプレイス型のECモールに出品するところから始めることができます。

特にアマゾンは世界的に有名なECプラットフォームになっているため、集客面でも大きなメリットがあります。同ウェブサイト内にリスティング広告を行うと購買意欲の高いユーザー中心に効果的な広告を配信でき、売り上げ向上に繋げやすいのも大きな魅力です。

デメリットとしてはプラットフォームのデザインやフォーマットが決まってしまっているため、出品者が自由にカスタマイズできる領域が極めて狭い点があります。そのためオリジナリティを出したい、ブランドマネジメントがしたいという事業者の方にとっては不自由になる可能性があります。また、出品する商品によっては激しい価格競争にさらされる可能性があります。そのためマーケットプレイス型のECモールに出品する前にはSWOT分析などを行って自分の商品の優位性と弱点をしっかり分析した上で出品すると良いでしょう。

マーケットプレイス型ECモールのメリット:

  • 大口・小口商品販売で柔軟なセールスが可能
  • 場合によってはテナント型よりも費用対効果が高い
  • 集客力が高く、起業初心者が始めるのに良いことも
  • サイトを作り込む必要がないので気軽に出品可能

マーケットプレイス型ECモールのデメリット:

  • デザインがカスタマイズできない
  • ブランドマネジメントがしづらい
  • 競合他社が多いので価格競争が起きやすい

ECモールのタイプ比較3:マルチブランド型ECモール

マルチブランド型ECモールの構築図

マルチブランド型ECモールとは多数のブランドを展開する企業が自社で大きなECモールを構築し、単独企業でモール型ECを展開している形です。ブランドごとにECサイトを立ち上げると費用もかかり集客効率もよくないため、ひとつの自社モール型ECサイトを立ち上げ、そこにマルチなブランドを出店することで効率化を図ることができます。

マルチブランド型のメリットとしてはコストを削減できる点が挙げられます。また、ブランド力を支えにモールとして一体となって展開することができるため顧客ロイヤリティも上げることができ、CRM(顧客管理)も効果的に行うことができます。

一方デメリットとして、マルチブランド型は複数ブランドを展開していることが前提となるため、ブランド力の弱い事業者・企業が行っても効果が薄い点にあります。また楽天やアマゾンのように集客力のあるプラットフォームに参加するわけではないので、自社でマーケティングを行う必要が発生することも想定されます。

また、保有する異なるブランドをひとつのECモールに統合させる大きなプロジェクトとなるため、ランニングコストが他のECモールの種類と比較して低くても初期費用が大きくなる可能性があります。そのため、マルチブランド型ECモールを設けることが本当に費用対効果が高いのか4P分析BPRのフレームワークなどを効果的に活用して事前にしっかりと検証することが大事になります。

マルチブランド型ECモールのメリット:

  • 複数の同社ブランドをひとつのECモールに統合
  • 他の種類のECモールと比較してコストが安くできる
  • ブランド力を高められる
  • 顧客管理がしやすい

マルチブランド型ECモールのデメリット:

  • ブランド力が弱いと効果が薄い
  • 集客力を上げるため自分でマーケティング努力が必要になる可能性
  • ランニングコストは低くても初期費用が大きくなることも
  • 事前に費用対効果が良いか検証する必要

ECモールランキング

ここまではECモールの種類を比較してきましたが、次には数多くあるECモールを比較し、ランキング形式でおすすめのECモールを紹介していきます。

日本国内ECモールランキングトップ3

日本国内ECモールランキング1位:楽天市場

楽天ECモールのウェブサイト

日本国内で最大のECモールとされているのが楽天です。日本のEC業界では先駆け的な存在で、現在では5兆円規模の売り上げを誇っています。

楽天はネットショップの数が最も多く、国内最大規模のECテナント数があるのも特徴です。特に楽天グループは楽天カードから銀行、証券、オークション、携帯電波など幅広い事業を展開しており、楽天ポイントへの還元率が高いこともユーザーから選ばれている理由といえます。

最近では特にファッションや食品など幅広いジャンルの商品が楽天市場に豊富に揃っているのが魅力で、ふるさと納税も楽天のプラットフォーム一つで簡単に行えることがユーザー増加にもつながっています。

楽天はテナント型のECモールなので、店舗をそのままオンライン化して出店したいと考えている事業者の方には適しています。

日本国内ECモールランキング2位:Amazonジャパン

AmazonジャパンのECモールサイト

AmazonジャパンはアメリカのAmazon社の日本支社ですが、日本でも国内2位のシェアを誇るECモールです。日本でも多くの人々が利用していて、幅広い種類の商品とサービスが最大の強みです。特にKindleのような電子書籍において日本のマーケットに先駆け的に入ってきたのがアマゾンで、最近ではプライムビデオなどオリジナルの人気コンテンツ配信においてもプレゼンスを発揮しています。

日本国内の売上高は約3.2兆円とされていますが、これは同社における世界シェアの中でも25%ほどの割合を占めるため、日本はアマゾンにとっても大きなマーケットとなっています。

アマゾンの最大の特徴は注文から配送までの時間が非常に早い点でしょう。ワンクリックオーダーの仕組みを作ったのはAmazonが世界初とされており、この簡易決済システムによってオンラインショッピングの顧客エクスペリエンスが格段に向上しました。さらにプライムメンバーになると無料で配送が可能になったり、当日配送も可能になったりと利便性において他のECモールやサービスと効果的に差別化できているのがAmazonの優位性でもアります。

上記の通りAmazonはマーケットプレイス型のECモールなので、商品単位で出品したいと考えている方に適しています。そのため起業準備のためにアマゾンでネット販売を経験してみたいという方にも向いているといえます。

日本国内ECモールランキング3位: Yahoo!ショッピング

Yahoo!ショッピングのECモールサイト

Yahoo!ショッピングは株式会社のヤフーが運営するECモールで1兆6500億円規模の売上高があります。Yahoo!ジャパンは日本でもよくみられているニュースサイトですが、このYahoo!ポータルからショッピングへ簡単にアクセスでき、ポイントも還元されることからYahoo!ユーザーから強い支持を得ています。

商品のラインナップも充実しており、衣料品や日用品などをお得に購入したいと考える顧客にとって利便性が高いとされています。

東南アジア越境のECモール

海外に出店・出品して利益を上げたいと考えている方も多いでしょう。そんな方には東南アジアの越境ECモールが大きなビジネスチャンスがあります。東南アジアは近年ECの成長率が著しく高まっており、日本製品の人気の高さが日系企業にとっては大きな優位性となっています。

東南アジアの越境ECモールにはマレーシアやインドネシア、シンガポール、ベトナムなどがあり、SNSの普及率も高いため日本国内よりも大きなマーケットで販売ができるのが最大の魅力です。

東南アジアの越境ECモールには以下のようなサービスがあります。

  • Shopee
  • Lazada
  • Bukalapak
  • Tiki

東南アジア越境のECモール:Shopee

Shopeeのウェブサイト

Shopee(ショッピー)はシンガポール発の越境ECモールで、2015年の登場からたった1年で流通総額18億円を達成するなど今東南アジアで勢いのあるECモールとの呼び声が高いです。

Shopeeではカスタマーサポートチームは問い合わせに対応せず、出店事業者自らが顧客に対応するのが特徴のため、顧客からすると出品者・出店者と直接コミュニケーションを取ることができるのが安心感につながっているとされています。また、シンガポール以外の東南アジア諸国にも同時に商品の販売ができるため、大きなマーケットをターゲットにできるのが最大の強みです。

東南アジア越境のECモール:Lazada

東南アジア越境のECモールLazada

Lazadaもまた東南アジア向けの越境ECモールです。2016年に中国の大手ECモールであるアリババグループが経営権を獲得し親会社となったことで東南アジアや中国圏で話題になりました。
Lazadaはマレーシア、シンガポール、ベトナム、フィリピン、タイ、インドネシアの6カ国でサービスを展開していて、2030年までにサービス圏を3億人にまで拡大していく方針です。モール訪問者数は1日500万人を突破し、年率約20%の勢いを維持しつつ成長しています。

Lazadaにはローカルアカウントとグローバルアカウントの2種類があり、東南アジアで越境ECモールに出店したい場合はグローバルアカウントになるので注意してください。

東南アジア越境のECモール:Bukalapak

東南アジア越境のECモールBukalapak

Bukalapak(ブカラパク)は2010年に設立されたインドネシア発のECモールで、2019年には月間7000万人ものアクティブユーザーを獲得し、同国最大のECモールのひとつになっています。。

ジャカルタの株式市場に上場した際には同国最大のIPO(新規上場株)となったことでも話題になりました。2019年では企業の時価総額が2800億円を達成し、急成長を遂げています。

東南アジア越境のECモール:Tiki

東南アジア越境のECモールTiki

Tikiはベトナム発のECモールですが、同国内ではShopeeに次ぐユーザー数がいるとされています。2010年の創業時には英語の本を販売するオンライン書店だったことから、ベトナム版のAmazonとも称されており、現在では本家アマゾンと同様に幅広い商品の販売を手掛けています。

まとめ

この記事ではECモールの種類を比較し、日本国内から東南アジア越境のECモールをランキング形式で紹介しました。オンラインビジネスの起業で失敗する要因の多くは集客にあるとされています。ECモールなら集客力を補うことができ、セールスイネーブルメントに集中できることもできます。オンラインビジネスを始める前に自分に適したビジネススタイルを見つけることが起業で成功する近道ですので、ECモールに進出する前に本記事を参考にするようにしましょう。