個人でもメディアを所有して管理できるようになった今、オウンドメディアという概念は今までになく重要なものとなっています。自社製品・サービスを自由に宣伝できる媒体の存在は、マーケティングという概念を根底から覆すものだと言っても過言ではありません。
「オウンドメディアは意味ない」という意見も聞かれますが、集客の観点からはこれ以上なく効果的なツールだと言えます。この記事では、そんなオウンドメディアの意味、目的、成功事例を合わせて紹介します。
オウンドメディアとは?
オウンドメディアとは、会社や個人事業主などが自身で所有するメディアのことです。動画マーケティングや情報発信用として用いられることがほとんどで、自身の手で消費者にコンテンツを提供することを可能とします。
他者に依存しないコンテンツマーケティングが可能なため、宣伝戦略を自由に策定できるのが魅力です。一方、メディアの開設費用や維持費がかかることがあるため、ペイドメディア(テレビCMなどの有料メディア)と比べて割高と言われることもあります。
オウンドメディアは集客に大きな効果があり、一度人気を獲得すると安定して継続的に注目を集めることができます。有名人などとコラボレーションするのにも適しており、ニュースサイトなどの他メディアに取り上げられることで更に知名度を上げることも可能です。
オウンドメディアの要点
- コンテンツの内容や配信方法を自由に管理できる
- 自社製品・サービスに関連するコンテンツのみを表示するため、SEOに有利
- メディアの開設費用や維持費がかかる
- 顧客のリテンション向上、支持層の形成に役立つ
- 新規顧客獲得の観点からは、ペイドメディアの方が若干有利
オウンドメディアの意味
オウンドメディアの意味は「所有されているメディア」です。英語では「Owned Media」と言い、ペイドメディア(Paid Media)と対をなす概念だと言えます。
オウンドメディアとペイドメディアの最大の違いは、広告媒体にかかる権利を完全かつ恒久的に所有するかどうかという点にあります。広告費用にも明らかな差がありますので、大企業のほとんどは両方をうまく併用しています。
また、オウンドメディアと意味が近い言葉に「アーンドメディア(Earned Media)」というものがあります。こちらは口コミや報道などの第三者による宣伝媒体を指す言葉で、商品のレビューやSNS投稿などが具体例として挙げられます。
自然発生的な性質を持つアーンドメディアに対して、オウンドメディアは宣伝主の意向が100%反映されるのが特徴です。その分、宣伝能力が宣伝成果に直接反映されるため、能力の高いマーケティングチームを持つことが極めて重要だと言えます。
以下に、オウンドメディアと意味の近い言葉をまとめてみました。
費用 | 集客効果 | BtoB適正 |
目的 |
|
オウンドメディア |
大 |
高い |
高 |
|
ペイドメディア |
中 |
高い |
中程度 |
|
アーンドメディア |
小 |
低い |
低い |
|
オウンドメディア事例
オウンドメディア事例を紹介します。それぞれのメリットもまとめました。
ウェブサイトやブログ
ウェブサイトやブログは、他のオウンドメディアを束ねるハブとしても機能する中心的なメディアです。あらゆるタイプのコンテンツを配信できる他、顧客と直接対話したり、他のビジネスとの連絡口として機能したりします。
目的・・・ブランドイメージの確立、ニュース配信、顧客へのサービス提供
費用・・・約10〜500万円(作成費用)、約5千〜5万円(管理費)
アプリやソフトウェア
自社のアプリやソフトウェアもオウンドメディア事例に含まれます。広告を排他的に展開できるため、既存顧客に対する宣伝効果が非常に高いのが特徴です。一方、新たな顧客層を開発することがほとんどできないというデメリットもあります。
目的・・・サービスの提供、広告掲示
費用・・・約100万〜1,000万円(開発費)
メールマーケティング
厳密にはオウンドメディア事例ではありませんが、メールマーケティングも顧客とつながる方法のひとつです。会員に向けて製品情報を提供するのはもちろん、メールプラットフォーム(Gmailなど)に広告費用を支払うことで見込み客に宣伝メールを届けることもできます。基本的に無料で利用できるのも魅力です。
目的・・・新製品・サービスの宣伝、ニュース配信、顧客維持
費用・・・無料(マーケティング会社を利用しない場合)
掲示板
ウェブサイトに紐づけられている場合がほとんどですが、掲示板も独立したオウンドメディア事例のひとつだと言えます。SNSの登場により影響力に陰りが見えますが、いまだに高い人気を誇ります。コミュニティ育成に特に効果的です。
目的・・・コミュニティの育成、サポートの提供、ニュース配信
費用・・・無料(外部の掲示板システムは有料なものも存在する)
SNSアカウント
過去10年で一気に主流となったオウンドメディア事例です。費用対効果が高く、低コストで顧客との接触頻度を高めることができます。競合者も多く、フォロワーを獲得するには高度な宣伝戦略が必要となります。最近はSNSマーケティング企業も増えてきました。
目的・・・コミュニティの育成、サポートの提供、ニュース配信
費用・・・無料(外部の掲示板システムは有料なものも存在する)
オウンドメディア成功事例
オウンドメディア成功事例を紹介します。それぞれの事例について、ポイントをまとめました。
Onitsuka Tiger MAGAZINE(オニツカタイガーマガジン)
http://www.onitsukatigermagazine.com/
<<<ポイント>>>
デザイン性の高いメディアはファッションブランドと相性抜群
人気靴ブランドOnitsuka Tigerのオウンドメディア成功事例です。新作コレクションの紹介だけでなく、ニュースやインタビュー記事も配信しており、ブランドに関する最新情報が手に入る総合情報サイトとして機能しています。
マクドナルド公式(McDonald’s)
https://www.youtube.com/@whatsupmcdonalds/videos
<<<ポイント>>>
テレビ視聴層とSNS利用者の両方に訴える取り組み
マクドナルドの公式YouTubeチャンネルです。主に15〜30秒程度の動画広告を配信しており、人気動画は軒並み数百万回再生を記録しています。テレビCMと上手く連携した取り組みは、オウンドメディアとペイドメディアを高度に融合させたものだと言えるでしょう。
くらしの良品研究所
<<<ポイント>>>
圧倒的なコンテンツ量で情報サイトとしても機能
生活雑貨を扱う無印良品が展開するオウンドメディア成功事例です。コラム、ポッドキャスト、連載ブログを中心に、非常に多くのコンテンツを配信しています。自然な形で消費者アンケートも行なっており、宣伝の枠を超えた取り組みの数々が魅力です。
みんなのマネ活
https://www.rakuten-card.co.jp/minna-money/
<<<ポイント>>>
消費者の疑問に答える情報サイトは、顧客エンゲージメント向上に効果大
楽天グループが提供するオウンドメディア成功事例です。お金に関する疑問に答える情報記事を配信しており、自身の展開する楽天銀行および楽天カード事業への集客につなげる取り組みを行なっています。芸能人やインフルエンサーとも積極的にコラボを行なっており、コンテンツ形態も連載記事、マンガ、運占いと幅広いです。
Japanese Airline (@ana.japan)
https://www.instagram.com/ana.japan/
<<<ポイント>>>
国際市場を意識して英語にも対応
ANA(全日本空輸)はインスタで大きな人気を獲得しており、オウンドメディアを成功事例に導いています。最近では、リール重視に方針転換することでフォロワー数を3倍に増加させました。国外からのアクセスも多く、人気の投稿には数千以上のコメントが寄せられています。
オウンドメディアランキング
様々なプラットフォームの中でも、SNSや動画配信サイトは最も人気があるオウンドメディアです。ここでは、企業に最も採用されているオウンドメディアのランキングを紹介します。
1位 Facebook
オウンドメディアランキングの1位を飾るのはFacebookです。あらゆるタイプのコンテンツに対応しており、広範な顧客獲得・維持に最も有用なプラットフォームだとされています。地域に根ざす企業にとっては特に欠かせない存在で、次世代型の情報発信手段として完全に定着するに至りました。
デザイン |
採用 | 立ち上げ |
集客 |
△ |
◎ | ◯ |
◯ |
2位 Instagram
画像中心のインスタは、製品やサービスを視覚的に宣伝するのに最適です。若い利用者が多いため、流行を作りやすいとも言われています。オウンドメディアランキングの中でも、最もバランスの取れたプラットフォームだと言えます。
デザイン |
採用 | 立ち上げ |
集客 |
◎ |
◯ | ◯ |
◎ |
3位 X(旧Twitter)
複雑なコンテンツの配信は難しいものの、X(旧Twitter)も企業オウンドメディア例に含まれます。本日のセールなど、簡単な日次ニュースの発表に最適かつ無料で運用できるのが魅力です。日本で特に人気があり、手軽さが支持されているようです。
デザイン |
採用 | 立ち上げ |
集客 |
○ |
◎ | ◎ |
○ |
4位 LinkedIn
日本ではやや知名度が低いものの、LinkedIn(リンクトイン)もB2Bオウンドメディアとして良く使われています。製品やサービスの宣伝よりも事業そのものを紹介するのに適しており、投稿を通じて会社の知名度を向上させることができます。優秀な人材を惹きつけるのにも最適で、別角度からビジネスを改善させるのに役立ちます。
デザイン |
採用 | 立ち上げ |
集客 |
◯ |
△ | ◯ |
△ |
5位 YouTube
最大の動画配信サイトであるYouTubeは、動画マーケティングに最適のプラットフォームです。再生数に応じて報酬がもらえるため、オウンドメディアランキングの中でも異色の存在だと言えます。立ち上げコストがやや高く、管理に高度な知識を必要とするのがデメリットです。
デザイン |
採用 | 立ち上げ |
集客 |
◯ |
△ | △ |
◎ |
オウンドメディアまとめ
オウンドメディアの一覧やSNSでの採用実績について紹介しました。上記以外にも様々な形態がありますので、知らず知らずのうちに企業所有のメディアを使用していたということも多々あるでしょう。
最近では、オウンドメディア運用代行を行う企業も増えてきました。これからメディアを立ち上げたいという場合は、参考本を買って自分で勉強する以外にも制作を外注するという選択肢もあるでしょう。いずれにせよオウンドメディアを成功事例に導くためには、その意味と集客目的をよく把握しておく必要があります。