有名人に商品を宣伝してもらう手法は、効果的に売上を増加させられるとして時代を超えて使用されてきました。最近ではTikTokやYouTubeのインフルエンサーにマーケティングを依頼する事例が急増しており、こうした手法はインフルエンサーマーケティングと呼ばれています。
この記事では、インフルエンサーマーケティングの費用、事例、効果、メリットなどを紹介します。効果的な宣伝戦略を模索しているという企業・個人の方は、ぜひ参考にしてみてください。
インフルエンサーマーケティングとは?
インフルエンサーマーケティングとは、SNSを中心に人気のインフルエンサー(影響力のある人、有名人)に特定の商品やサービスの宣伝を依頼するSNSマーケティングの手法のことです。有名人が持つファンベースを丸ごと取り込むことができるため、業界に大物インフルエンサーが存在する場合は特に効果が大きいと言えるでしょう。最近は、動画コンテンツ上でインフルエンサーマーケティングを実施することが多いので、動画マーケティングとオーバーラップする部分も多分にあります。
例えば、新発売の化粧品を宣伝したい場合、メイク方法の動画を扱うYouTubeチャンネルに依頼してみるという方法が考えられます。動画の中でおすすめ商品として紹介してもらうことで、動画を見たファンの人に購入を促すことが可能です。
商品情報を効果的に伝えることができるため、ブランド認知やイメージの向上に用いることもできます。「有名人が使っている」ということはステータスとして見られることが多いため、インフルエンサーマーケティングを行っていない競合他社に差をつけることができます。
SNS自体が人気のメディアとなっている現在、インフルエンサーマーケティングは会社にとってテレビCMを出すのと同じぐらい重要な戦略だと言えます。2009年の黎明期から現在まで、SNS利用者は一定して増加してきました。2023年のインフルエンサーマーケティング市場規模は164億ドルに達しており、この数字は今後も増加を続けるものとみられます。
今では、フォロワー数の比較的小さいマイナーなインフルエンサーが多数存在する状況となっており、少ない費用で劇的な効果が見込めるマーケティング手法と認識されるに至っています。また、コンサルティングファームによるSWOT分析の結果、インフルエンサーマーケティングは、宣伝する人、消費者、企業の三者が皆得をできる仕組みとも言われており、従来のコマーシャル手法に代わるものとして採用事例が増えています。特に、拡散性に対するストレングス、つまり強みが秀でている点は注目に値します。
インフルエンサーになりたいと思っている人も増えており、最近の調査では若者の半数近くがインフルエンサーになりたいと回答しています。配信コンテンツの多様化に合わせて異なるスタイルのインフルエンサーマーケティングが可能となっており、会社と顧客の距離を縮める手段としても注目です。
インフルエンサーマーケティングの効果とメリット
インフルエンサーマーケティングには、多数の効果とメリットがあります。以下に代表的なものとリストアップしました。
ブランド認知度の向上
YouTubeやTikTokの利用者は数多く、グローバル企業の70%以上がこれらのプラットフォームを使用していると言われています。有名インフルエンサーは、100万人単位のフォロワーを持っているため、一度に多数のターゲット顧客にアピールできるのが魅力です。インフルエンサーとして認められた後には、ブランドアンバサダーとして長期的な契約を結び、ブランドの顔となることもあるようです。
また、SNSユーザーはプラットフォームの利用率が高いことでも知られています。業界がニッチであればあるほど、忠誠心の高い顧客を獲得できるのが特徴です。ブランド認知度を向上させられるだけでなく、商品を直接宣伝できるのもメリットです。
費用対効果が高い
インフルエンサーマーケティングは、費用対効果の高い手法です。SNS自体がコミュニティ育成に特化したツールであり、低コストで効果的な広告展開が可能とされています。また、フォロワーはインフルエンサーの発するメッセージに敏感という性質を持つため、商品をわずかに露出するだけで大きな反応を得ることができるのがポイントです。
こうした手法は、従来の有名人を用いたTVコマーシャル手法に近いと言えるでしょう。中央集権的な機構(この場合はテレビ局)を介する必要がないため、マーケティングコストを削減できるのは大きなメリットだと言えます。
信頼の構築
インフルエンサーとフォロワーは、強い信頼で結ばれています。そのため、特定のインフルエンサーに繰り返しマーケティングをお願いすることで、商品やサービスに対する信頼性を向上させることができます。
例えば、自動車会社が車関係のコンテンツを作成する動画配信者に宣伝を依頼する場合、自社の車が動画内に繰り返し登場することで信頼性をアピールすることができます。このことは、既存顧客との長期的な顧客関係の構築だけでなく、顧客忠誠度を向上させることにもつながります。
クリエイティブなイメージの醸成
インフルエンサーマーケティングを依頼することで、自社ブランドにクリエイティブなイメージを与えることもできます。SNS自体が先進的な技術であり、クリエイターが多い環境であることから、クリエイティブなコンテンツを通して時代を先取りするイメージを醸成するのに最適だと言えるでしょう。インフルエンサーに触発されて、商品を購入し、それをまたSNSで公開されるなど芋づる式の連鎖が発生し、顧客ロイヤルティが徐々に作られていきます。
このことはテクノロジーを扱う会社や個人事業主にとって特に重要で、SNS上で存在感を高めることで先進的なビジネスとして認知させることが可能です。コンテンツ自体が魅力に溢れる場合、さらなるフォロワー獲得につなげることもでき、宣伝を担当するインフルエンサーとウィンウィンの関係を築くこともできます。
インフルエンサーマーケティング費用
気になるインフルエンサーマーケティング費用ですが、基本的には1回の依頼あたり10〜100万円程度が相場なようです。具体的な算出方法は様々ですが、次のような方法で依頼料金を算出するケースが多いようです。
フォロワー単価×フォロワー数 = インフルエンサーマーケティング費用
例えば、10万人のフォロワーを持つインフルエンサーに依頼する場合、フォロワー単価が2円の場合は20万円、4円の場合は40万円が費用となります。フォロワー単価は2〜4円程度が相場ですが、海外のインフルエンサーなどは1円以下に設定している人も多いようです。
基本的にはインフルエンサーと直接交渉して決めることとなりますので、依頼する前にアカウントやチャンネルを詳しく調査すると良いでしょう。動画閲覧回数は多いか、コメントは多く寄せられているかなどを精査することで、フォロワー数に見合った人気があるかどうかを判断することができます。
人気インフルエンサーの場合、単価を大幅に引き上げてもいいでしょう。逆に、フォロワー数は多いが人気はあまりないというような人の場合、単価を引き下げるのが得策だと言えます。また、依頼料(契約料)以外にも以下のような費用が発生することがありますので気をつけましょう。
- インフルエンサーに提供する商品の配送料
- インフルエンサーに提供するサービスの料金
- 移動が必要な場合、交通費や宿泊費など
費用の観点では、リスティング広告のように広告を打てば打つだけ、費用が比例関係で伸びていく点には注意が必要でしょう。費用の効果を最大限に出すためには、制約しやすいターゲットの特定がマストです。
会社のインフルエンサーマーケティング事例
ここでは、有名企業によるインフルエンサーマーケティングの事例を紹介します。いずれの企業も、自社のイメージに合致するインフルエンサーを利用して効果的に自社製品を宣伝しているのが特徴です。
ユニクロ × ヒカキン
ユニクロは、圧倒的な人気を誇るユーチューバーのヒカキン(フォロワー数1170万人)と提携し、新商品の紹介や服の着こなし方を動画で紹介しました。若者のファンが多いヒカキンを利用することで、ターゲット顧客を狙い撃ちにした宣伝戦略を可能としています。
ユニクロから届いた巨大プレゼントを開封する動画は600万回以上視聴されており、費用(契約料、商品代、商品配送料)に対する効果の高さが伺えます。ヒカキンの明るく開放的なキャラクターはユニクロのブランドイメージと合致しており、自然な形でのインフルエンサーマーケティングを可能としています。
ローソン × はじめしゃちょー
ローソンは、はじめしゃちょー(フォロワー数1,000万人以上)と提携してインフルエンサーマーケティングを成功事例に導いています。ローソンの一日店長を務める企画は、はじめしゃちょーの名前とキャラクターを効果的に利用したものだと言えるでしょう。
人気インフルエンサーを1日拘束することになるため、契約料は若干高くつくことが予想されます。一方、多数の商品を一度に紹介することができ、企画自体の面白さも相まって、多数の視聴者を惹きつける内容の濃い宣伝を可能としています。
はじめしゃちょーの規模となると、従業員も抱えるくらいの事業にもなっているので、インフルエンサーとしての典型的な起業の成功例といえます。
スターバックス × ハリセンボン
スターバックスは、人気お笑いコンビのハリセンボンとコラボして新メニューなどを紹介しています。注目はコンテンツ内容で、メニューだけでなく「注文方法」を紹介する動画を複数発表しています。これはスターバックスの持つ「注文の仕方が複雑」というイメージを払拭するための取り組みと思われ、商品紹介とブランドイメージの向上を同時に行う画期的な手法だと言えるでしょう。
庶民感のあるハリセンボンをコラボ相手に選んだことも、消費者目線のコンテンツを提供する目的に沿ったものだと言えます。前述のインフルエンサーマーケティング事例は「1,000万フォロワーに対して数百万回再生」だったのに対し、こちらは「15万フォロワーに対して50万回再生」と、費用対効果の面で優っているのもポイントです。
資生堂 × 白石麻衣
最後に紹介するインフルエンサーマーケティング事例は、資生堂×白石麻衣によるメイク紹介動画です。「すっぴん初公開」のタイトルはインパクトが高く、人気女優のファン層にアピールできる企画だと言えるでしょう。
フォロワー数140万人に対して500万回再生を達成しており、紹介したインフルエンサーマーケティング成功事例の中で最も効率の良いキャンペーンだと言えます。男性視聴者が購買に至らないという欠点もありますが、再生回数の多さはコンテンツ内容とキーワード戦略の効果を物語っています。
インフルエンサーマーケティングまとめ
インフルエンサーマーケティングの比較まとめをお届けしました。実際に有名人とコラボして宣伝する際は、コンテンツの視聴回数だけでなくリーチや販売数の変化などを追跡する必要があります。売上の増加が最終目標ですので、投資額に見合った見返りがあるかどうかを分析するのは最重要項目となります。
インフルエンサーマーケティングの注意点として、確立したばかりの新しい手法だということが挙げられます。市場規模は拡大を続けていますが、適正費用や効果の測定方法など、未知数のところが多いのも事実です。
そのため、宣伝効果を効果的に測定する方法なしではリスクが伴うということを認識しておく必要があります。インフルエンサーにプロ意識が欠けている場合、不祥事につながる可能性もありますので、コラボ相手を選ぶ際は十分な身辺調査を行うようにしましょう。