仮想通貨について訴える人

仮想通貨を扱う米企業のジェネシス・グローバルが、投資家から10億ドル(約1500億円)以上をだまし取ったとして詐欺の疑いで訴えられました。ニューヨーク州が起こした今回の訴訟は、ジェネシス・グローバルの親会社であるデジタル・カレンシー・グループ(DCG)や、「仮想通貨長者」として知られるウィンクルボス兄弟が経営するジェミナイも同時に相手取ったものです。

仮想通貨で相次ぐ訴訟

訴訟は10月19日(木)に始まり、ジェミナイとジェネシスが過去に共同して行っていたキャンペーンの内容が争点となる見込みです。このキャンペーンはビットコインなどの仮想通貨をジェネシスに貸し出すもので、財政状況が危ういのにも関わらず「低リスクで投資できる」ことを謳っていたことが違法とみなされています。

今回訴訟を受けることとなったジェミナイは、「仮想通貨の億万長者」として知られるキャメロン・ウィンクルボスとタイラー・ウィンクルボス兄弟が運営する会社です。ウィンクルボス兄弟は、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ氏に対して訴訟を起こしたことで一躍有名になりました。

ジェミナイは2022年8月9日にも、ウィンクルボス兄弟が2億8200万ドルを横領したとして訴訟を起こされています。2022年11月にはジェミナイの顧客資産9億ドルが凍結されており、翌年1月には未登録の証券を提供した疑いで別の訴訟の対象となっていました。

ジェミナイと提携するジェネシスも、連続訴訟の影響を受けて2023年1月に破産申請を行っています。両社の間には軋轢があったとされており、今回の同時訴訟は仮想通貨の金融企業が共倒れを起こしたケースと見る向きもあるようです。

ジェネシスの親会社であるデジタル・カレンシー・グループや、同会社のCEOであるバリー・シルバート氏も、1.1億ドル以上の損失を隠蔽しようとしたとして告発されています。これまでに企業側から発表されたコメントはなく、今後は裁判所を通じて応酬が行われるものとみられます。

投資家の反応

投資家はほぼ満場一致で裁判所を支持する姿勢をとっており、今回の訴訟は仮想通貨業界そのものに対する信頼も低下させています。「仮想通貨の冬」が続く中、市場が不況を抜け出せないでいるのは「業界人が無能だから」と考える人が一定数存在するようです。

仮想通貨業界に対する失望を表明するツイート

ビットコインなど、一部の銘柄が復調傾向にあることが伝えられたばかりですが、こうしたプラス材料に対しても懐疑的な見方をする人が多いようです。大多数の銘柄は依然として苦戦を強いられており、仮想通貨市場がFTX崩壊の影響を脱却するには更なる時間が必要と思われます。