成功への道は多種多様ですが、法人向け名刺管理会社Sansan(サンサン)を創業した寺田親弘(てらだちかひろ)氏の歩みは注目に値します。
経営手腕と投資戦略の鮮やかさで知られる寺田氏ですが、その年収と資産は一体どのような規模なのでしょうか? 寺田氏がPEST分析を始めとした市場分析において成功を収めたことはよく知られています。寺田氏の経営手腕は専門家からも高い評価を受けており、経済学の講義や投資戦略のモデルケースとして取り上げられることも。
この記事では起業家としても有名な寺田親弘氏の年収、資産に加え、生い立ち・経歴、Sansanの創業から現在に至るまでの経歴などについて解説します。
ぜひ最後まで読んで、読者1人1人のビジネスを成功させるヒントをつかんでいただければと思います。
寺田親弘氏の資産とは|資産の内訳
Sansan株式会社の創業者である寺田親弘氏は、法人および個人向けデジタル名刺管理サービスのイノベーターとして知られています。
寺田氏が築き上げたSansanのサービスは、導入企業数7000社超、市場シェア82%、6年連続で業界第1位の座を維持しています。そんな寺田氏の資産内訳(推定)は以下の通りです。
資産項目 | 資産価値(推定) |
株式 | 529億5000万円 |
その他 | 不明 |
Sansan株式会社は2019年、東京証券取引所が運営していたベンチャー企業(新興企業)向けの株式市場「東証マザーズ」にも上場し、世間の認知向上にも繋がりました。
Sansanの株価は2023年11月5日時点で1278円、時価総額1604億円にのぼります。寺田氏が保有するSansan株は4143万2920株、持ち株比率は33.04%という圧倒的な割合です。保有株数の時価は529億5000万円を超え、寺田氏の資産ポートフォリオの大部分を占めていると思われます。
そのため、寺田氏の収入はSansanの業績や投資収益率(ROI)によって変動します。「名刺管理のデジタルトランスフォーメーション(DX)」というビジネスの核となるのはインバウンドマーケティングです。これは顧客が自らの意志でSansanのサービスを見つけ、利用するように誘導するマーケティング手法です。もしSansanの市場価値がさらに高くなれば、寺田氏の資産も比例して増加するでしょう。
寺田氏は、新たなビジネスチャンスの開拓も続けています。法人向けのみならず、個人向け名刺管理サービスの普及促進や、他のビジネスコミュニケーションツールへの投資など、事業多角化を図る動きも見せています。これらの取り組みが、企業価値のさらなる拡大を支える鍵となると期待されています。
寺田親弘氏の年収
ここでは寺田親弘氏の年収を概観します。どのようにして高額の年収を得るに至ったのか、Sansan株式会社の代表取締役としての役員報酬と、大株主としての配当収入という二つの側面から探ってみましょう。
役員報酬
役員報酬は、基本給、ボーナス、各種手当など、寺田氏がSansan株式会社の経営者として直接受け取る金額を指します。上場企業の代表取締役の年収は、会社の業績、規模、業界などによって大きく異なります。 同社公開の有価証券報告書によると、役員報酬総額は1億4000万円で役員数は7名。 社長はその他役員の約2倍の報酬額となるケースが多いと言われており寺田氏の役員報酬はおよそ3000万円-4000万円と推測されます。
株主配当
株主配当は、企業の株式を保有する株主が受け取る利益の分配金です。寺田氏が保有するSansanの持ち株数は4143万2920株(時価総額529億5000万円超)。
同社は現状、BtoBマーケティング、基幹システムの強化など、事業拡大に向けて利益を再投資に当てる段階にいるため、株主配当を実施していません。したがって寺田氏の配当収入はゼロ。しかし今後、株主配当を実施した場合には、Sansan筆頭株主である寺田氏が高額配当を得られる可能性は大きいと思われます。
寺田親弘氏の年収予測
有価証券報告書などの公表されている情報を基に寺田氏の年収を慎重に推計すると、役員報酬として受け取っているのが3000万円から4000万円、配当収入に関しては現状0円であるものの、Sansanの株主配当が実施される場合に数億円に及ぶ可能性があると考えられます。ただし、これはあくまでも推計であり、実際の数字はSansanの経営状況や市場の変動、株主総会での決議などによって変わるため、確実な数値を出すことは困難です。
寺田親弘氏の生い立ち、経歴
寺田親弘氏は1976年、東京都で生まれました。経営者である父親の元に生まれ、高校は2023年夏の甲子園優勝で脚光を浴びた慶應義塾高校、大学は慶応義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)、新卒で三井物産へと就職。絵に書いたようなエリート街道を歩みます。そんな寺田親弘氏のプロフィールは以下の通りです。
本名 | 寺田 親弘(てらだ ちかひろ) |
生年月日 | 1976年12月29日 |
出身 | 東京都 |
学歴 | 1995年、慶應義塾高等学校を卒業
1999年、慶應義塾大学環境情報学部を卒業 |
主なキャリア | 三井物産 三三株式会社(現Sansan株式会社) |
幼少期〜学生時代
寺田親弘氏は1976年、東京で生まれます。幼少期から経営者である父のもとで、経営についての深い洞察を身につけたとのこと。小学校に入学した頃から、戦国時代の歴史に強い関心を示しました。
経営者である父の背中を見て、現代で天下を取るには「ビジネスを極めること」が最適解であると知り、「起業するには?」と考え始めたようです。中学〜高校時代には経済学に深い興味を抱き、様々なビジネスコンテストに参加しました。
この時期、寺田氏はビジネスの世界で成功するための基本スキルを培ったといいます。名門・慶應義塾高校を卒業後、寺田氏は慶応義塾大学環境情報学部に進学します。大学では経済学の基礎理論に加えて、3C分析や4P分析、SWOT分析などのマーケティング理論についても学んだようです。
大学時代の教育は寺田氏がビジネスセンスを磨く上で不可欠なものとなり、その後の起業メンバーと出会ったのも大学時代だったそうです。
サラリーマン時代
寺田氏は慶應義塾大学を卒業後、大手総合商社の三井物産に入社します。入社後は情報産業部門に配属され、社会人3年目から米カリフォルニア州サンフランシスコ、シリコンバレーへ駐在。1年間でシリコンバレーの企業100社以上を訪問し、最先端のITビジネスから刺激を受けていたようです。
この頃、日米のIT業界に身を置いていた寺田氏は、顧客満足度の向上と顧客ロイヤリティの重要性を認識。この経験が後の法人向け名刺管理サービス「リンクナレッジ(現Sansan)」の基礎となりました。アメリカ駐在からの帰国後は社内ベンチャーの立ち上げなど、起業準備を進めます。
三三株式会社(現Sansan株式会社)創業
寺田親弘氏が起業し、三三株式会社(現Sansan株式会社)を設立したのは2007年6月、31歳の時でした。B2B市場に特化した名刺管理サービス「リンクナレッジ(現Sansan)」を展開し、BNIなどの企業ネットワーキングに革命を起こしました。企業の顧客情報管理を効率化し、業界内で高い評価を受けます。
功績が認められ、2011年、在日米国大使館などが主催する起業家贈賞制度「The Entrepreneur Awards Japan 2011」において、U.S. Ambassador’s Award(駐日米国大使賞)を受賞。
その後も成長を続け、2012年に個人向けの名刺管理アプリ「Eight」をリリース。寺田氏はブランド戦略にも熟知していたため、三三株式会社の価値を短期間で高めることに成功しました。2014年には商号をSansan株式会社へ変更し、2019年には東京証券取引所マザーズ市場(東証マザーズ)に上場。
上場までの道のりは決して平坦ではありませんでしたが、創業補助金を活用し、投資家からの資金調達に成功し続けます。2021年には東京証券取引所第一部市場(東証一部)に区分変更を行うなど、事業拡大のサイクルを繰り返し、成長を続けます。こうした寺田氏の経歴は、全てのビジネスマンにとって貴重な学びの源となっています。
寺田親弘氏はSansanでどのように成功したのか?
寺田親弘氏がSansanでどのように成功したのか、時系列で解説していきます。寺田氏は5大商社に数えられる大手企業「三井物産」でのサラリーマン経験を経て、日本特有のビジネス文化である「名刺」に着目。名刺交換における非効率性を解消するというユニークなビジネスモデルを考案します。
創業初期:名刺文化への新たなアプローチ(2007年〜2012年)
三井物産における情報産業部門での勤務と米シリコンバレーでの海外勤務は、寺田氏に多大な影響を与えました。寺田氏はそこで得た知識とネットワークを生かし、2007年に三三株式会社(現Sansan株式会社)を創業。
Sansanは日本独自の名刺文化にデジタルソリューションを持ち込むことで、市場のニッチを埋めました。創業初期は資金繰りに苦しみながらも起業資金の調達に成功。Sansanのようなビジネスモデルは当時存在しなかったため、投資家にビジョンを共有し、理解してもらうまでに相当な苦労を重ねたようです。
成長期:ブランド認知と事業拡大(2013年〜2018年)
2013年、SansanはテレビのCM広告を皮切りに、大規模なマーケティングを展開します。これが大きな転機となり、Sansanの認知度は飛躍的に向上。
CM広告では人気俳優の松重豊を起用し、「それ、早く言ってよ〜」のフレーズは社会現象に。寺田氏は、Sansanのブランドマネジメントに大成功します。寺田氏は同時期、組織拡大とサービス向上に注力。法人向け名刺管理サービス「Sansan」と個人向け名刺管理サービス「Eight」でそれぞれ異なるターゲットにリーチし、顧客を増やします。両サービスを中心としたSansanの顧客企業数は増加し、その後の資金調達も順調に進むようになりました。
成熟期:黒字転換とユニコーン企業への昇格(2019年〜)
2019年を境に、Sansanは黒字転換を達成。市場シェアを拡大し続け、2020年には中小企業向け請求書管理「BillOne」を導入。サービスの幅を広げました。こうしてSansanは、日本の名刺文化に革命をもたらし、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)市場における、トップ企業となりました。
現在、SansanはAIを活用したビジネスインテリジェンス(BI)や営業支援ツール開発など、新しい領域への進出を図っているとのこと。創業以来、紆余曲折を経て成長を続けるSansanの動向から目が離せません。
寺田親弘氏の資産を種別に考察
デジタル名刺管理サービス「Sansan」によって一躍有名起業家となった寺田親弘氏ですが、保有資産も相当額に上ると予想されます。寺田氏は資産・年収を一切公開していないため、資産ポートフォリオの全貌は謎に包まれています。推測の域を出ない情報も多々ありますが、株式とそれ以外に分類し、寺田氏の保有資産について紹介します。
株式資産
Sansan株式会社は上場企業であるため、寺田氏が保有するSansan株については株主情報から正確に追跡することできます、寺田氏が持つSansan株は4143万2920株、時価総額に換算すると529億5000万円相当です。
寺田氏はSansanの筆頭株主で、発行済み株式に占める保有率は33.04%。日本有数の株式長者となっています。Sansanは現在、株主に対する株式配当を行っていませんが、会社の業績上昇に伴い今後実施する可能性も。将来的に予想される寺田氏の配当収入は、億単位に上ると指摘されています。
また、寺田氏は個人資産を運用し、Sansan以外の企業へ株式投資を行っている可能性もあります。その場合、上場企業の創業者兼社長ということもあり、資産運用額は高額に上る可能性が高いです。
株式以外
国内屈指の株式長者である寺田氏ですが、その資産ポートフォリオはリスク分散化の視点から言うと、株式のみに留まらない可能性が高いです。株式に加え、債券、不動産、金(ゴールド)、ETF(上場投資信託)など伝統的なアセットクラスや、ビットコイン(BTC)に代表される暗号資産(仮想通貨)など、多様なアセットクラスを保有している可能性が濃厚。これらに加えて寺田氏は2023年4月、私立高等専門学校「神山まるごと高専」を開校。寺田氏個人およびSansanから10億円を寄付するなど、教育事業にも進出しています。
寺田氏のポートフォリオについては不明点が多いものの、Sansanの企業規模や市場での評価から鑑みると、日本屈指の資産規模になると思われます。Sansanのビジネスが拡大し、新たな市場のニッチを開拓していく中で、寺田氏の資産総額はさらに上昇していくことでしょう。
参考文献
まとめ|寺田親弘氏の成功からの学び
寺田親弘氏が示した成功の道は、私たちに多くの示唆を与えています。「名刺管理の効率化」によるワークフローの最適化という課題を見つけ、当時は存在しなかった市場を創った寺田氏の経験は、課題発見力と問題の解決力が、いかにビジネスチャンスに繋がるかを教えてくれます。寺田氏は、三井物産でのサラリーマン経験から人脈探しの非効率性に気づき、それがSansan創業のきっかけとなりました。
この点から我々は、職場で見過ごされがちな業務フロー上の問題点が、大きなビジネスとなることを学べます。これはBPR(業務改革)に通じる問題意識となります。また寺田氏が安定した環境を捨ててまで新しい挑戦に飛び込んだのも、幼い頃から養っていた起業家志向によるものと言えます。創業初期の泥臭い苦労話は、成功に至るには地道な努力と忍耐が不可欠であることを教えてくれます。
自ら顧客回りを行いサービスを紹介して起業費用を調達した苦労話は、信念を持って地道に課題へと取り組む姿勢の大切さを物語っています。投資家にSaaSのビジネスモデルを理解してもらえなかったという当時の状況は、「先進的なビジネスモデルが必ず評価されるとは限らない」という現実を反映しています。しかし寺田氏の成功を見ると、時代を先取りする革新的なサービスは、最後には莫大な投資リターンを生むことを示しています。
寺田氏の成功から学べるのは、「市場のニッチを見極める鋭い洞察力」「高い問題解決力」「自分のビジョンに自信を持ち、全力を尽くすこと」という3つの要素が重なった時、想像を超える価値を生み出せるということです。本記事をブックマークした上で、寺田氏がSansanを成功させた秘訣を学び取り、読者の皆さんも自身のビジネスを加速させましょう。