10月初め、テスラや宇宙開発企業のスペースXのCEOであり、世界で最も裕福な人物として知られるイーロン・マスク氏が、SNSサービス「X(旧名Twitter)」上で最もフォローされている人物となりました。

マスク氏のフォロワー数は約1億5,900万人で、これはX全体のユーザー数の3分の1以上に当たります。異例とも言える人気の背景には、「ミームコイン」として知られる仮想通貨銘柄を熱烈に支持していることがあるようです。

ミーム系仮想通貨が原動力か

マスク氏の時価資産額は2,500億ドル(約30兆円)を超えており、同氏は2023年10月時点で「世界で最も裕福な人物」とされています。その一挙一動には大きな注目が集まることから、マスク氏は世界の資産家の中でも最も大きな影響力を持っているとも言われています。

イーロン・マスクのTwitterアカウント

SNSマーケティングにも利用されるXはマスク氏が所有・運営するサービスで、自身も頻繁に投稿することで知られています。特に仮想通貨関連の投稿はユーザーからの注目度が高く、ミーム系銘柄であるDogeコインを熱烈に支持していることでも話題となっています。

今年7月には、マスク氏の公式アカウント(@elonmusk)にDogeコインのロゴ(Ð)が表示されたことが話題を集めました。このロゴは現在でも確認でき、Xのロゴ(𝕏)に隣接する形で表示されています(上画像)。

マスク氏は今年8月「XはDogeフレンドリーなスペースだ」と発言し、Dogeコイン支持の姿勢を改めて明らかにしました。過去にも「Dogeコインは人々皆のための仮想通貨だ」などと発言してきたマスク氏ですが、同氏がCEOを努めるテスラもDOGEを支払い方法として認可する方針を発表しています。

こうしたことを受け、Dogecoinのトークン単価は2021年5月に60円台を突破する値上がりを記録しました。これは取引開始時の0.03円台から2,000倍近く上昇したことを意味し、マスク氏の持つ影響力の大きさを裏付けていると言えます。

ドージコインの価格推移

過去5年間のドージコインの価格推移(Google)

マスク氏がこうした発言を繰り返すのは、仮想通貨市場に対する注目の高さを考慮したものだと推測されます。特定の銘柄に対する支持を表明することで、最終的には自身の影響力を強化する思惑が伺えます。自身でも「大量のDogeコインを所有している」ことを明らかにしており、単純に自身の仮想通貨資産を倍増させる狙いがあるとも言えるでしょう。

影響力に陰りも?DOGEに未来はあるか

過去24時間で2度もミームに関するツイートを投稿するなど、マスク氏の仮想通貨熱は収まる気配がありません。その一方で、Dogeコインの過去1年間の価格推移は低調を極めており、現在は最高値を記録した2021年5月から80%安の8〜9円台で取引されています。

TwitterのXへの名称変更も、DOGEの価格に大きな影響を与えることはありませんでした。現在も「DOGE強気」の姿勢を崩していないマスク氏ですが、同氏の影響力に陰りが見えてきたのではと考える人もいるようです。

今回のフォロワー記録更新後もDOGEに価格上昇の気配はなく、仮想通貨の投資家が短期的なトレンドに捉われない姿勢にシフトしたことを示唆しています。今後ドージコインが成功できるかどうかは、現実世界での採用事例が増えるかどうかに依ると言えるでしょう。

前述のように、テスラはマスク氏の一声によりDogeコイン決済に対応することを発表しました。現在も公式ストアなどでDOGEが利用可能となっていますが、支払い対象は車以外のテスラグッズに限られています。試験運用の開始からすでに1年以上が経過しており、他の製品がドージコインで買えるようになるかどうかは未定のままとなっています。

マスク氏がDogeコインへの投資を見限ることは考えにくく、次の大発表に向けた計画立てフェーズにいると考える向きもあります。「ミームコインの総本山」とも言えるXがDOGE決済対応に踏み切ることで、2021年に記録したような価格上昇がもう一度起こるのではないかとう意見は後を絶えません。

マスク氏には及びませんが、DogeコインのXフォロワー数も385万人を突破しており、現在も増加傾向にあります。DOGEの共同創業者であるビリー・マーカス氏の公式アカウント(@BillyM2k)も210万フォロワーを獲得しており、依然として力強いコミュニティが存在することを裏付けています。